
建設業に求められる業務改善(BPR)の課題と実践ポイント
近年、AIやICTといったデジタル技術の発展に伴い、企業の業務や働き方に大きな変革が求められています。建設業においても、人手不足の解消や業務効率化に有効な手段として、設計・施工・管理などの各プロセスでの業務改善(BPR)に関心が寄せられています。
しかし、建設業界には古くから続いてきた建設プロセスや商慣習が存在しており、抜本的な業務改善が難しいという声も聞かれます。
本記事では、建設業の業務改善(BPR)を図るうえでの課題や、実効性のある取組みを実施するためのポイントを解説します。
「現状に課題を感じつつも、なかなか一歩を踏み出せない」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.建設業界における業務改善(BPR)の課題
- 1.1.1.重層下請構造
- 1.2.2.個々の企業努力だけでは限界がある
- 1.3.3.発注元から下請け企業へのしわ寄せ
- 1.4.4.現場への浸透性
- 2.建設業界におけるBPRの実施ポイント
- 2.1.業務棚卸で業務プロセスを“見える化”
- 2.2.業務のムダや問題点を把握
- 2.3.ICT化やAIロボット活用ができるか検討
- 3.BPRには注意点も。スモールスタートで拡大していこう
- 4.まとめ
建設業界における業務改善(BPR)の課題
BPRとは、「Business Process Re-engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」の略称で、既存の組織や制度を抜本的に見直し、業務改善を図る取組みのことを指します。既存の体制やプロセスを一つひとつ見直し、大幅な業務改善を図ることが目的です。
人手不足や長時間労働が懸念される建設業界では、働き方改革への対応を図るためとして、建設プロセス全体における業務改善(BPR)が検討されています。
しかし、建設業界において抜本的な業務改革を進めるには、以下などの事情を考慮する必要があります。
1.重層下請構造
建設業界には、元請け・下請け・二次下請けといった“重層下請構造”が存在しています。取引には古くからの商慣習が用いられる傾向があるほか、建設工事は専門性が高く分業が進んでいるため、新たな価値観や仕事の進め方が受け入れられにくい場合もあります。
2.個々の企業努力だけでは限界がある
建設業界は、発注者や建設企業、設計事務所といったさまざまな建設関連企業の相互関係で成り立っています。働き方改革やICT等の活用を進めるには、個々の企業の取組みだけでは限界があります。そのため、業界を挙げた横断的な取組みが不可欠といえるでしょう。
3.発注元から下請け企業へのしわ寄せ
下請けとして中間段階に介在している企業が増えると、対価の減少や労務費のしわ寄せが生じるおそれがあります。発注元の働き方改革の影響を受け、下請け企業の作業が増える、短納期発注が増加するといった問題も懸念されます。
4.現場への浸透性
建設業全体が進化していくためには、ICT活用をはじめとする建設プロセスの見直しが必要です。ただし、企業の利益だけを目的とした施策は、現場で働く従業員まで浸透せず、既存の非効率な業務フローから脱却できない場合も考えられます。こうしたジレンマから抜け出すには、従業員や関係者の理解を得られる仕組みづくりが求められるでしょう。
このように、建設業界におけるBPRはさまざまな課題があります。働き方改革や生産性向上、人材活用の面においても、建設業界の業務改善は重要な取組みです。テクノロジーの発展に伴い、従来の建設プロセスに変革が求められている現在、建設企業は個々の業務改善だけでなく、業界全体で連携を図り、実効性のあるさまざまな施策を総合的に講じていく必要があるでしょう。
建設業界におけるBPRの実施ポイント
抜本的な改善を図るBPR。さまざまな事情を抱える建設業界は、どのようなことから始めればよいのでしょうか。ここでは、BPRを成功させるための具体的な実施ポイントを解説します。
業務棚卸で業務プロセスを“見える化”
BPRを実施する際は、既存の業務内容やフロー、コストなどを洗い出し、業務の構造を断層的に把握する必要があります。そのためには、まず、業務体系表や作業手順シートなどを作成するとよいでしょう。
業務全体を大まかに分類し、そのなかに含まれる業務内容や手順を明確にしましょう。処理時間やコストなどを詳細に書き出すことがポイントです。業務プロセスで必要な作業を“見える化”することで、無駄や時間ロスが発生している原因(現状の課題)や問題点を見つけられます。
業務のムダや問題点を把握
業務プロセスを見える化した後は、必要のない業務・機械化または外注できる業務を把握して、非効率な業務プロセスを見直すことが重要です。
以下のような点をチェックしましょう。
- 担当者によって重複している業務はないか
- 属人化している業務はないか
- 時期による業務量の偏りがないか
- 不必要、削減できる業務手順がないか
社内で業務の実態を把握することで、非効率となっている業務を削減できます。業務量や手順を標準化すれば、短納期要請や繁忙期への対策も可能になるでしょう。安定した施工品質を維持できるほか、残業や長時間労働の防止につながります。
ICT化やAIロボット活用ができるか検討
業務棚卸で業務のムダや問題点を把握したら、各フローでICTやAIロボットが活用できないか検討しましょう。
具体的には以下が挙げられます。
- 工程管理・受注管理のクラウド化
- ドローンによる安全点検、測量、高所の点検等
- 電子黒板やタブレットによる遠隔での情報共有
- AIロボットによる単純作業や重作業の自動化
- 社外で対応できる業務のアウトソーシング
ICTやAIロボットで対応できる業務を自動化することで、労働時間の削減や生産性向上、人的コストの削減が期待できます。
ただし、ICTやロボットの活用に際しては、自社の業務課題やコストを考慮したうえで、適切な設備やシステムを選定することが重要です。
BPRには注意点も。スモールスタートで拡大していこう
BPRでは、洗い出した課題や問題点に応じて施策を講じていくことが必要です。ICT・AIなどの新たなシステムの導入も有効ですが、限られた資金・人材のなかで必要なシステムをすべて導入することは難しいといえるでしょう。
また、建設プロセスの一部のみを自動化・機械化しても、それに伴う人員配置や管理体制を整備できなければ、根本的な業務改善とはいえません。
実効性のある業務フローへ改善するには、社内全体や関係者が共通認識を持ったうえで、業務上のトラブルが生じないよう推進していく必要があります。
長期的・横断的な実施が必要となるため、時間やコストなどを総合的に判断することが重要といえるでしょう。
ICT化をはじめとした、大掛かりなシステムの導入が難しい企業は、まずは身近な業務のスモールスタートを検討してはいかがでしょうか。
毎日発生する写真整理業務を代行できる『カエレル』
写真整理業務は工事現場で毎日発生する業務のひとつ。日中の作業を終えてから写真整理を行うことも多く、現場監督への負担も大きいといえます。
しかし、写真整理業務は目視による写真のチェックが必要なため、100%自動化することは難しいのが現状です。
株式会社小田島組の運営する『カエレル』は、土木現場の経験が豊富なスタッフが工事写真の整理を代行します。負担が大きい業務をアウトソーシングすることで、ほかの業務に充てる時間を確保できます。
BPRのスモールスタートには、まずは写真整理業務のアウトソーシングから始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
AIやICTなどのデジタル技術の発展に伴い、建設業の各プロセスにおいて業務改善(BPR)が求められています。
しかし、抜本的なBPRを進めるには、建設業界特有の構造や慣習などの事情を考慮する必要があります。
そのためには、建設にかかわる産業全体で連携を図り、実効性のある施策を横断的に実施していくことが必要です。各社が共通認識を持ち、BPRの分析や改善を行いながら、長期的な視点でPDCAサイクルを回す必要があるでしょう。
BPRを進める際は、まず業務の棚卸を行い、必要に応じてICT化等を検討しましょう。
しかし、新たな設備やシステム導入、それに伴う人材確保や管理体制の構築が難しい場合もあります。
現状に課題を感じつつも、なかなか業務改善に取り組めないとお悩みなら、まずは身近な写真整理業務のアウトソーシングからスモールスタートしてみてはいかがでしょうか。