catch-img

建設業の人手不足問題はどうなる? 人材確保・育成に向けた3つの取組みを解説

近年、建設業界では就業者の高齢化が深刻な問題となっています。
就業者の約3割が55歳以上、29歳以下が約1割という状況のなか、将来的な担い手の確保が危ぶまれています。建設業が今後も地域インフラの整備・維持という重要な役割を果たしていくためには、人材確保や育成が急務です。

出典:国土交通省『建設業の人材確保・育成に向けて(令和2年度予算案の概要)


このような状況を受け、国土交通省と厚生労働省が連携して建設業の人材確保・育成に向けた取組みの推進に乗り出しました。

本記事では、両省で進められている3つの取組みや支援について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.1.人材確保
    1. 1.1.働き方改革の促進
    2. 1.2.誰もが安心して働き続けられる環境整備
  2. 2.2.人材育成
    1. 2.1.中小建設事業主等への支援
      1. 2.1.1.■建設労働者育成支援事業
      2. 2.1.2.■認定職業訓練
      3. 2.1.3.■人材開発支援助成金
    2. 2.2.若年技術者への実技指導・資格等の取得支援
      1. 2.2.1.■ものづくりマイスター制度による実技指導
      2. 2.2.2.■安定就労に有効な資格等の取得支援
      3. 2.2.3.■パソコンスキル講習を組み合わせたハロートレーニング
  3. 3.3.魅力ある職場づくり
    1. 3.1.助成金による支援
      1. 3.1.1.■働き方改革推進支援助成金
      2. 3.1.2.■建設事業主等に対する助成金
    2. 3.2.専門家によるコンサルティング支援・指導
  4. 4.まとめ


1.人材確保

建設業界が人材不足に陥っている原因のひとつに、3K(きつい・危険・汚い)というイメージが定着していることが考えられます。また、改善しよう、建設業は他産業に比べて労働時間が長く、待遇面においても好条件とはいえない部分もあります。慢性的な人手不足を解消するためには、人材の雇用を促進し、流出を防ぐための取組みが重要といえるでしょう。
建設業の人材確保の施策として、以下の取組みが挙げられます。


働き方改革の促進

働き方改革関連法の施行により労働基準法をはじめとしたルールが見直されています。とくに長時間労働の常態化や労働者の不当な待遇差などは、従業員の離職や、メンタルヘルス不調などを招くリスクがあるため注意が必要です。

国土交通省が2015年のデータを基に取りまとめた資料によると、建設業においては、約65%が4週4休以下で就業しており、他産業と比べて総労働時間が多い傾向にありました。他産業で一般的な週休2日が取れていない企業も多く、工事遅延や天候不順によって残業・休日出勤を実施している現場も見られていました。

こうした課題を解消するために、以下の取組みが推進されています。

  • 適正な工期設定、施工時期等の平準化
  • 週休2日モデル工事の拡大
  • 専門工事一括管理施工制度に向けた施工体制の実態調査・分析
  • 建設業許可等の手続きの電子申請化
  • 建設現場の生産性向上

建設業界は重層下請構造のため、元請けや下請け事業者といった関係者が協力して、統括的に取組むことが重要です。

出典:国土交通省『建設産業の現状と課題


誰もが安心して働き続けられる環境整備

建設業の人材確保や育成に向けて、安心して働ける職場環境への改善が求められます。
女性が活躍できる環境を整備することや、社会保険加入の徹底・定着が推進されています。

誰もが安心して働き続けられる環境整備には、以下のような取組みが挙げられます。

  • 女性活躍に関する取組み実態の調査
  • 女性活躍を支える地域ネットワーク活動の支援
  • 行政・元請け・下請け一体となった保険加入の推進
  • 社会保険加入要件化、一人親方対策
  • 法定福利費の調査、公平かつ健全な競争環境の整備

とくに問題とされているのが、一人親方や中小の施工会社の社会保険未加入問題です。建設業法改正によって、2020年10月1日から“社会保険への加入”が要件化されます。そのため、未加入の建設業は建設業許可を失う可能性があります。企業は、社会保険加入の徹底に加えて、女性の活躍推進や福利厚生の充実に取組み、人材確保や定着を目指すことが重要です。

出典:国土交通省「新・担い手3法の成立など最近の建設業を巡る状況について


2.人材育成

建設業では技術者の高齢化が進んでおり、将来的な担い手不足や次世代への技術継承が課題となっています。国土交通省の発表によると、2025年の技能労働者数は47万~93万人不足する見込みです。

今後は、新たな雇用促進を進めつつも、離職防止・定着促進に向けた施策を行い、中長期的な担い手確保に取組む必要があるでしょう。政府は、若者の技術者や離転職者、学卒未就職者への育成を進めるために、以下のような取組みを実施しています。

出典:国土交通省『建設産業の現状と課題


中小建設事業主等への支援

中小建設事業主に対して、若年技術者等の育成のためのさまざまな支援制度を実施しています。


■建設労働者育成支援事業

35歳以上55歳未満を除く離転職者・新卒者・学卒未就職者等を対象として、型枠工等の躯体系職種や電気・配管等の建設業務にかかわる職業訓練から就職支援までをサポート。
パッケージ型の業界団体等と連携して人材育成を実施。


■認定職業訓練

広域団体認定訓練の新規実施団体認定、認定職業訓練に要する経費を助成。


■人材開発支援助成金

企業やグループ企業において建設業に関する実習や座学、訓練を実施した場合に経費や賃金の一部を助成。

出典:国土交通省『建設業の人材確保・育成に向けて(令和2年度予算案の概要)


若年技術者への実技指導・資格等の取得支援

若年技術者に対して、実技指導ができる制度を整備するほか、安定して就労できる資格などの取得支援を実施しています。


■ものづくりマイスター制度による実技指導

中小企業等にものづくりマイスターを派遣して、若年技術者への実技指導を実施。
資格取得を促して賃金アップにつながる取組を進めている中小企業等に対する実技指導の強化。


■安定就労に有効な資格等の取得支援

正社員就職を支援するため、訓練と職場体験を組み合わせた出口一体型の訓練を人材ニーズの高い業界団体等に委託して実施。


■パソコンスキル講習を組み合わせたハロートレーニング

建設機械等の運転技能だけでなく、パソコン講習等を組み合わせた職業訓練を実施。

出典:国土交通省『建設業の人材確保・育成に向けて(令和2年度予算案の概要)


3.魅力ある職場づくり

若年層の入職促進や雇用定着、安定した技能継承を図るためには、労働者にとって働きやすい魅力的な職場環境の整備も必要です。賃金や休日、社会保険の加入など、適正な職場環境を整備することはもちろん、将来への展望を感じられるキャリアパスの確立、女性の活躍促進なども視野に入れることが重要といえるでしょう。

魅力のある職場づくりのための取組みには以下が挙げられます。


助成金による支援

労働時間の短縮や処遇改善などにはコストが必要です。中小規模の事業者も積極的に働き方改革に取組めるようさまざまな支援が実施されています。代表的な助成金・コースには以下が挙げられます。


■働き方改革推進支援助成金

中小企業や小規模事業者が生産性を高めつつ、労働時間の短縮などに取組む場合、中小企業や傘下企業を支援する事業主団体に対して助成。

出典:『働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)


■建設事業主等に対する助成金

若年・女性建設労働者トライアルコース

35歳未満又は女性を建設工事現場での現場作業等に従事する者として一定期間試行雇用した中小建設事業者に対して助成。

雇用管理制度助成コース

就業規則や労働協約の変更により、雇用管理改善につながる制度を導入し、目標を達成した中小建設事業主に対して助成。

出典:厚生労働省『建設事業主等に対する助成金のご案内(建設事業主向け)


専門家によるコンサルティング支援・指導

職場環境や労働条件の見直しに伴う労務課題について、専門家によるコンサルティングや商工団体等と連携したセミナーや相談会を実施しています。代表的は取組みには、以下が挙げられます。

  • 中小専門工事業者の安全衛生活動のための集団指導・研修会等の実施
  • 雇用管理責任者に対する、職場づくりやコミュニケーションスキル向上のための研修
  • 労災保険特別加入制度や、一人親方に対する安全衛生教育などの指導
  • 墜落・転落防止対策のための専門家による診断の実施、指導等

労働者の入職と職場定着を促進するためには、事業主が率先して職場環境を改善していく必要があります。専門家による指導や研修等の制度を活用しながら、魅力ある職場づくりに務めましょう。

出典:国土交通省『建設業の人材確保・育成に向けて(令和2年度予算案の概要)


まとめ

建設業は就業者の高齢化が進み、次世代への技術継承や人材育成が大きな課題となっています。

このような事態に、国土交通省・厚生労働省の両省が連携して建設業の人材確保・育成に向けた取組みを推進しています。

人材確保には、働き方改革の促進による労働条件の改善をはじめ、社会保険の加入徹底、福利厚生の充実による処遇改善などがポイントとなります。人材育成については、政府が実施している助成金による支援や、訓練・指導による支援も視野に入れるとよいでしょう。また、安定した雇用を実現するためには、魅力ある職場づくりの推進が必要です。基本的な労働条件を見直すだけでなく、安心して働ける魅力的な職場環境を整備しましょう。

これからも地域の守り手として社会を支えていくためには、行政と建設業界が一丸となって取組むことが重要です。

さまざまな施策や支援を積極的に取り入れ、人手不足問題の解消に取組んでいきましょう。

よろしければこちらの記事もご参照ください。

  建設業の生産性を向上するには?現場監督ができる取り組み | 株式会社小田島組 建設業は労働時間が長い、休暇が少ないなどのイメージが強い業種です。人手不足も深刻で建設業は生産性の向上が求められています。建設業のイメージや、建設業の生産性を阻害する要因、対応策などについて解説します。 株式会社小田島組


お問い合わせ

お気軽に
無料相談を実施しておりますので、ご検討中の法人様はお気軽にご相談ください。
詳しい資料もご用意をしております。