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建設業の“新・担い手3法”とは? 主な改正ポイントを3つのテーマ別に解説

2019年6月、建設業法・入契法・品確法の3つの法律が改正され、建設業の担い手の確保・育成に向けた具体的な措置が規定されました。

“新・担い手3法”では、働き方改革の促進、建設現場の生産性向上、災害時の緊急対応の強化・持続可能な事業環境の確保といったテーマで基本理念や法律が見直されています。

本記事では、新・担い手3法の3つの改正ポイントを、国土交通省発表の資料『新・担い手三法について ~建設業法、入契法、品確法の一体的改正について~』を基に解説します。


目次[非表示]

  1. 1.1.働き方改革の促進
    1. 1.1.工期の適正化
    2. 1.2.施工時期の平準化
    3. 1.3.現場の処遇改善
  2. 2.2.建設現場の生産性向上
    1. 2.1.技術者に対する規制の合理化
    2. 2.2.ICT(情報通信技術)の活用
  3. 3.3.災害時の緊急対応の強化・持続可能な事業環境の確保
    1. 3.1.発注者・建設業者団体の責務
    2. 3.2.事業継承・経営管理責任者に関する規定
  4. 4.まとめ


1.働き方改革の促進

建設業は他産業に比べて労働時間が長く、週休2日が確保できていないケースも見られていました。発注者からの短納期要請や天候不順などによって、残業や休日出勤をやむなくされるケースもあり、労働者や現場監督の業務過多や長時間労働が懸念されていました。

こうした課題の改善に向けて、新・担い手3法では長時間労働の是正をはじめとする、労働環境の改善に向けた新たな規定が設けられています。


工期の適正化

長時間労働の原因のひとつに、発注者からの短納期要請が挙げられます。
こうした不適正な工期設定を防ぐために、2020年10月より工期の適正化が規定され著しく短い工期での請負契約が禁止されます。

注文者および建設業者には、以下に注意する必要があります。
 
■注文者
天候等を考慮した適正な工期を設定しなければなりません。また、工期に影響があると認識している場合は、契約締結までの通知が必要です。違反している場合は、処分が下る可能性があります。

■建設業者
適正な工期はもちろん、材料費や労務費の内訳や、工程ごとの作業・日数等を明らかにして見積もりを行うよう努める必要があります。天候不順などのやむを得ない事情で工事遅延が起きる場合は、発注者に工期延長を請求できます。

施工しない日や時間帯を定める際は、契約書面に詳細を明記する必要があります。また“著しく短い工期”については、中央建設業審議会が作成した基準で判断されることとなります。


施工時期の平準化

公共工事は、年度末の予算に従って実行されるため、発注時期・工期末が一時期に集中しやすい傾向があります。

2019年9月より、公共工事の集中を防ぐために、適切な工期設定をはじめ施工時期の平準化を図るための方策が規定されています。

具体的には下記があります。

  • 国庫債務負担行為(2か年国債やゼロ国債)の活用などで、閑散期の工事稼働を改善
  • 繰越明許費の活用で早期に必要日数を見込み、適切な工期設定を実施
  • 地域単位での発注見通しの統合・公表

発注者は年末から年度末にかけて工期が集中しないよう、上半期での工事執行を目標として計画的かつ早期の発注を実施する必要があります。その対策として、迅速な繰越手続きや積算の前倒し、債務負担行為などの積極的な活用も求められています。


現場の処遇改善

新・担い手3法の重要ポイントとなるのが、社会保険加入の要件化です。建設業界では、2012年より社会保険へ加入対策が進められており、加入率の上昇が見られています。

しかしその一方で、未だ加入していない企業が存在するのも事実です。建設業の人材確保や、公平な競争環境を構築するためにも、社会保険加入をさらに徹底することが重要とされています。

今回の法改正では、2020年10月より社会保険加入が建設業許可を取得するための要件となりました。未加入事業者は建設業の許可・更新ができなくなるため、実質的に社会保険への加入が義務となります。

また、社会保険加入の要件化に加えて、請負契約時の発注者は下請代金のうちの労務費相当分を現金払いとするよう、規範が強化されています。

出典:国土交通省『社会保険加入対策について


2.建設現場の生産性向上

建設業は、生活や社会の安全確保に欠かせない役割を担っています。
しかし、人口減少や少子高齢化に伴い、建設業界の人手不足が深刻化しています。2018年度における年齢階層別の建設業就業者数は、60歳以上の高齢者が約25%を占めており、30歳未満の若手人材は約10%。10年後には大量離職が見込まれ、将来の担い手不足が懸念されています。

こうした人手不足問題に対応するためには、限られた人材を有効活用し、ICT(情報通信技術)などの新技術を活用した生産性向上が求められます。新・担い手3法では、以下の取組みが規定・推進されています。


技術者に対する規制の合理化

2020年10月より、限りある人材を有効活用するために、建設現場における配置技術者の規制が合理化されました。具体的な内容は以下です。

■監理技術者の専任性の緩和
元請けの監理技術者に関して、補佐する者を現場に配置していれば、複数現場での監理技術者の兼任が可能になります。ただし、補佐する者は、監理技術者の職務に係る基礎的な知識・能力を有する必要があります。

■下請けを対象にした主任技術者の配置義務を見直し(専門工事一括管理施工制度)
特定専門工事については、下請けの主任技術者が行う必要がある施工管理を元請けの主任技術者が併せて行うことができます。


ICT(情報通信技術)の活用

人手不足に対応するためには生産性向上が必須です。2019年6月より公共工事の発注者・受注者の責務として“情報通信技術の活用”が規定されています。

建設業界ではICT活用による生産性向上『i-Construction』を推進しています。ICTの活用方法には、以下が挙げられます。

  • 調査・設計・施工・管理維持等の各プロセスにおけるICT活用拡大
  • 3次元データの収集・活用による施工の高度化・生産性向上
  • 生産プロセスの可視化や新工法の活用による、手戻り防止、安全性の向上
  • BIM/CIMの導入に向けた基準やルール整備の推進

今後は、積極的にICTや新技術を活用して、生産性向上に積極的に取組むことが求められます。


3.災害時の緊急対応の強化・持続可能な事業環境の確保

近年、日本では豪雨や地震などの自然災害による被害が増加しています。
自然災害が発生した際、迅速な復旧作業を進めるためには緊急対応力が不可欠です。今回の法改正では、災害発生時の緊急対応を充実強化させるとともに、持続可能な事業環境を確保するための責務やルールが規定されています。


発注者・建設業者団体の責務

2019年9月より、災害時に迅速な復旧ができるよう、建設業者や地方公共団体との連携を努力義務化しています。発注者の責務には以下が挙げられます。

  • 災害時など緊急性に応じて、復興における随意契約や指名競争入札等を選択
  • 建設業者団体などとの災害協定の締結、発注者間の連携を実施
  • 労災補償に必要な保険契約の保険料等の予定価格への反映、災害時の見積もり徴収の活用

全国的に自然災害が頻発するなか、個々の企業や地方公共団体が連携を図り、円滑な復旧・復興ができるよう努めることが重要といえるでしょう。


事業継承・経営管理責任者に関する規定

建設業の課題のひとつに“事業継承”問題があります。旧制度では建設業を継承する際、相続や合併等があった場合でも“建設業許可が引き継がれない”仕組みとなっており、あらためて新規で建設業許可の申請を行う必要がありました。

しかし、許可を受けるまでに空白期間が発生するため、無許可による建設業違反や受注ストップが起こる可能性があり、円滑な経営ができなくなる課題がありました。今回の法改正で、2020年10月より建設業許可の継承ができるように規定されています。

また、旧制度では、建設業の経営業務には5年以上の経験者(経営管理責任者)を1名以上常時配置することが要件とされていましたが、改正後は、経営管理の業務を適正に行う能力を有していると認められれば、許可要件として認められます。


まとめ

現在、建設業では高齢化や若手入職者の減少などにより、慢性的な人手不足問題を抱えています。

建設業が地域社会の守り手として持続可能な事業環境を確保するためには、担い手確保に向けた働き方改革の促進や、ICTの活用による生産性向上、災害時の緊急対応への強化、スムーズな事業継承による持続可能な事業環境の確保が必要です。

今回の法改正では、契約書への明記が必要な事項や、建設業許可要件となる規定が追加されています。

建設業が地域社会の安全・安全を確保する“守り手”として役割を果たしていくためにも、改正のタイミングに合わせて自社の課題に取組んでみてはいかがでしょうか。

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