
土木・建設業界で進むドローン活用! 注目される理由や導入の注意点について
さまざまな分野での活躍が期待されるドローン。
ICT活用による建設現場の生産性向上『i-Construction』が推進されている現在、土木・建設業界ではドローンの活用にも注目が集まっています。
本記事では、なぜドローン活用が注目されているのか、その理由や代表的な活用例、導入時の注意点について解説します。
目次[非表示]
- 1.土木・建設分野でドローン活用が進められる理由
- 2.土木・建設現場における代表的なドローン活用例
- 2.1.3Dレーザースキャナによる測量
- 2.2.現場の写真撮影による施工管理
- 2.3.資材の運搬作業
- 3.ドローン導入の注意点とは?
- 3.1.ドローンの禁止区域でないか
- 3.2.航空局の承認を得ているか
- 3.3.安全への配慮はできているか
- 4.まとめ
土木・建設分野でドローン活用が進められる理由
土木・建設現場は日本の少子高齢化の影響が大きく、人材不足が深刻な課題です。今後も持続的に社会を支えていくためにも、若手の人材確保が急務であるものの、建設業には「きつい・汚い・危険」といったイメージが定着しています。「作業に危険が伴う」「遠方の作業場が多い」などを理由に、離職に至った労働者も見られます。
また、近年では自然災害が多発・激甚化しています。建設業の人手不足は、そのまま復旧の遅れに直結するため、人手不足のなかでも迅速かつ適切な対応が求められます。人手不足という状況で、建設業が地域のインフラ整備・維持を担っていくためにも、現場の効率化や省人化が不可欠といえるでしょう。
こうした課題を改善するため、国土交通省がスタートした取組みが、『i-Construction』です。
i-Constructionは、土木・建設生産プロセスにおけるICTの全面的な活用によって生産性向上を図り、働きやすい魅力ある環境づくりを目指しています。
ICTの活用例には、UAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)が挙げられます。代表的なUAVといえばドローンです。測量・施工・検査などのプロセスにおいて、生産性や安全性の向上に有効とされています。i-Constructionでは、今後さまざまな現場でのドローン導入が期待されています。
出典:国土交通省『i-Constructionの生産性革命~』
土木・建設現場における代表的なドローン活用例
実際に、どのような形でドローンが活用されているのでしょうか。土木・建設現場におけるドローンの活用例をご紹介します。
3Dレーザースキャナによる測量
土木・建設現場で必ず行われる作業に測量があります。従来では専用の測量機を使用し、人が土地の位置・距離・面積を図ります。人が立ち入れない危険な場所や広大な土地などは、セスナといった航空機で測量を行うこともあります。しかし、「検査に時間がかかる」「航空機を使うと高額なコストがかかる」という問題があります。
そこで、ドローンの活用です。ドローンは航空機より低空を飛行するため、写真の精度や解像度が高くなります。3Dレーザースキャナを搭載したドローンなら、空から土地の形状を正しく撮影し、詳細な3次元地形データを取得できます。
ドローンを活用した測量には、以下の利点があります。
- 測量データ収集における時間や労力を削減できる
- 航空機での測量にかかるコストが不要になる
- 人が立ち入れないような危険を伴う場所も測量できる
- 大規模で複雑な地形でも、高精度・短時間で測量できる
- 3次元データの取得によって高精度な設計ができる
このように、従来の測量と比較して大幅に時間を短縮できるほか、危険を最小限にし、高精度な測量・設計が可能になります。
現場の写真撮影による施工管理
土木・建設現場では、工事の着手前と完成後に全景写真を撮影します。また、進捗状況を確認するために、工事中の全体像を撮影することもあるでしょう。しかし、全体を撮影できるような場所がなかったり、人が足を踏み入れるのが困難な場所があったりすると、適切に全景写真が撮影できません。
高所作業車などを活用して撮影する方法もありますが、機械の準備やコストがかかり、容易には導入できないこともあるでしょう。
遠隔操作できるドローンなら、足を踏み入れることが難しい場所の撮影が可能。全景写真もさまざまな角度で撮影できます。
また、ドローン写真撮影は、施工管理にも役立てられます。
- 作業場所を巡回させて現場の安全管理ができる
- 施工部分をドローン映像で点検して施工ミスを早期発見できる
ドローンの映像から現場の情報を得ることで、進捗状況をはじめ、安全管理や施工ミスの早期発見などにもおおいに役立ちます。
ドローンのなかには、遠赤外線カメラやGPSを搭載した製品もあります。遠赤外線カメラは、目視で確認できないコンクリートの浮きや、漏水・空洞などを確認できます。GPS付きカメラの場合は、位置データを登録すると自動飛行させられるため、夜間巡回やトラブル発生時の状況確認にも活用できます。
資材の運搬作業
土木・建設現場では建設資材の運搬作業がつきものです。場合によっては多くの人手が必要になるほか、体力面・安全面ともに不安を感じることもあるでしょう。
ドローンによって資材を運搬することで、運搬に必要な人手や体力を削減できます。ドローンを使った運搬作業には、以下のような利点があります。
- 資材を運搬する人員を削減できる
- 高齢者や女性でも資材の運搬ができる
- 運搬時の事故を防ぎ、安全性を高められる
- 傾斜地や山間部への運搬ができる
これまで運搬に必要だった人材を削減できるほか、高齢者や女性などの体力的な負担を軽減できるため、対応できる業務の幅が広がります。人手不足や高齢化が進む建設業界においての救世主となるでしょう。
ドローン導入の注意点とは?
ドローンは無人航空機として利用方法や運用が航空法で厳しく定められています。土木・建設現場で使用する前に、以下の注意点を確認しましょう。
ドローンの禁止区域でないか
ドローンには飛行禁止区域があります。以下の3つの空域は、落下した場合に危害を及ぼしたり、航空機に衝突したりといったおそれがあるため、原則として禁止されています。
- 地表または水面から150m以上の高さの空域
- 空港周辺の空域
- 人口集中地区の上空
これらの空域でドローンを飛行させる場合は、国土交通大臣の許可を受ける必要があります。
航空局の承認を得ているか
空港周辺や人口集中地区の上空で飛ばす場合だけでなく、飛行の方法によっては国土交通省航空局での許可・承認が必要になるケースがあります。承認が必要な主な飛行方法には、以下が挙げられます。
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 30m未満の飛行
- イベントでの上空飛行
- 危険物輸送
- 物件投下
また、アルコールを摂取した状態や、騒音を発するなど他人に迷惑を及ぼす方法で飛行させてはいけません。なお、許可申請については、飛行開始予定日の少なくとも10開庁日前までに手続きしておく必要があります。
安全への配慮はできているか
ドローンを飛行する際は、定められた法律を遵守することはもちろん、周囲の状況や天候に応じて、さらなる安全への配慮が求められます。下記の注意事項を確認し、ルールを守って利用しましょう。
- ドローンの落下を想定し、第三者の上空では飛行させない
- 接触した場合の影響が大きな場所(新幹線や高速道路など)では飛行させない
- 電波障害にかかわるような場所では、電線などと十分な距離をとって飛行させる
- 飛行前に期待の状態やバッテリーについて確認する
- 風や雨などの影響はないか確認する
万が一、ドローンが落下、あるいは人や車に接触すると、大きな被害を与えるリスクがあります。火災を引き起こすおそれもあるため、飛行場所にも注意が必要です。飛行させる際は、周囲の状況を確認して飛行できるかどうかを見極めるとともに、日頃から機体に亀裂や破損、異常がないか点検しておくことが重要です。
出典:国土交通省航空局『無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン 』
まとめ
深刻化する人手不足のなかで、建設業が地域のインフラ維持や安全確保の役割を担うには、現場の生産性向上が不可欠です。i-Constructionでは、建設業の生産性向上のための取組みが推進されており、なかでもドローンの活用に注目が集まっています。
ICTのひとつであるドローンは、これまで人の手で行っていた作業の労力・時間の大幅な削減が可能です。作業員の負担軽減、危険の回避といった利点もあるため、労働環境の改善や安全性の向上にもつながるでしょう。魅力のある職場環境を構築し、人手不足に対応するためにも、ドローンをはじめとしたICTの導入を検討しましょう。
ドローンを現場で活用する際は、航空法に基づいて必要な手続きをするとともに、落下や接触による事故が起きないよう、十分な安全対策が必要です。
現場の効率化や省人化を目指す企業は、正しい法律や飛行ルールを守ったうえで、生産性向上に役立つドローンを活用しましょう。
現場の写真撮影については、こちらの記事もご参照ください。