建設業界が次の標的に?ランサムウェア攻撃の最新動向と経営が取るべき備え
- さくら 及川
- 13 分前
- 読了時間: 6分

近頃、ランサムウェア攻撃が急増しています。
BIM/CIMやDXの進展に伴い、施工データや設計情報が狙われる時代です。
本記事では、被害の実態と経営層が取るべき備えをわかりやすく解説します。
目次
急増するランサムウェア攻撃とは

身代金型ウイルスと呼ばれる理由
ランサムウェアは、感染した端末やサーバ内のデータを暗号化し、
「元に戻すための身代金(ランサム)」を要求するサイバー攻撃の一種です。
企業が保有する設計図や施工データが暗号化されると、
工事進行や取引に大きな支障をきたします。
感染の主な経路と建設現場でのリスク
メールの添付ファイル、USBメモリ、リモート接続、
クラウド共有などが主な感染ルートです。
これらの通信経路は、ランサムウェア(身代金型ウイルス)にとって
格好の侵入ルートです。
特に建設業界では、現場と本社間のデータ共有が多く、
「協力会社経由の感染」 が起きやすい点が特徴です。
一度感染するとどうなるのか
感染後は、ファイルが暗号化され使用不能となり、
画面に「復号キーを買え」という警告が表示されます。
多くの企業が復旧までに数週間を要し、
工期遅延や信用失墜といった甚大な影響が生じます。
さらに、支払ってもデータが戻らないケースも少なくありません。
海外では、公共インフラ建設プロジェクトが丸ごと停止したケースも報告されています。
製造業や医療業界と同様、建設業界でも「情報は資産」という認識が求められています。
つまり、これからの安全管理は「ヘルメット」だけでなく
「データ保護」も含まれる時代です。
実際に起きた建設業界のランサムウェア被害事例
国内外の代表的な被害例
海外の大手ゼネコンA社では、2021年に外部からのサイバー攻撃の被害に遭いました。
セキュリティー会社によると、身代金要求型ウイルスであるランサムウエアによって、
請求書など130万件以上が流出したとみられています。
攻撃したランサムウエア集団はデータを人質に身代金を要求したそうです。
参照:日本経済新聞より
⚠️ 現場でよくある失敗例
「USBで他社の資料を開いただけ」で感染したケースもあります。
小さな油断が大きなトラブルにつながります。

経営層が今すぐ確認すべき3つのリスクポイント
経営層は、セキュリティ対策を「システム部門任せ」にせず、
経営リスクの一つとして認識する必要があります。
①現場端末・USBデバイスの脆弱性
現場のノートPCや外部USB経由で感染するケースが多く見られます。
特に写真整理・図面転送時の感染リスクは高く、
定期的なウイルスチェックや使用デバイス制限が重要です。
②クラウド共有・BIM連携の盲点
BIMデータを複数企業で共有する際、
アカウントの共有や権限の曖昧さから情報流出が起こります。
アクセス制御とログ管理を徹底し、
「誰が・いつ・どのデータにアクセスしたか」を明確にする仕組みを導入しましょう。
③取引先や協力会社経由の侵入リスク
2024年以降、サプライチェーン攻撃が急増しています。
協力会社の一社が感染すると、全体に波及する恐れがあります。
契約時にセキュリティポリシーを共有し、最低限の基準を設けることが有効です。
建設業DXとセキュリティ対策の両立方法

DX推進時に見落とされるリスク管理項目
多くの経営層が「DX導入=安全」と誤解しています。
しかし、クラウド化・外部連携が進むほどリスクは増加します。
情報資産管理を前提に、DX推進の初期段階からセキュリティ設計を組み込みましょう。
現場・本社間のセキュリティ連携を強化する仕組み
多要素認証やゼロトラスト導入により、アクセスを最小限に制御できます。
また、施工管理システムにログ監視機能を追加し、
不審なアクセスを自動検知する体制も重要です。
現役施工会社が実践するセキュリティ対策事例
施工管理ソフトを活用する
施工現場のセキュリティを高める有効な方法の一つが、
大手が運営する施工管理ソフトやクラウド型写真管理サービスの活用です。
これらのシステムは、運営会社が高度な
サーバセキュリティ・通信暗号化・アクセス制御機能を実装しているため、
自社単独で環境を整備するよりも安全性と安定性が格段に高まります。
特に、クラウド版の写真管理ソフトを導入することで、
現場写真・黒板データ・書類を安全に共有でき、
USB感染やメール添付による情報漏えいリスクを大幅に減らせます。
複数現場や協力会社とのデータ連携も容易になり、BCP対策の一環としても効果的です。
また、専用の施工支援サービスを利用することもおすすめです。
たとえば、弊社が提供する「カエレルサービス」では、
全国300現場以上の写真整理・データ管理を代行しており、
クラウド環境での安全なデータ保管・アクセス権限管理・情報統制を
ワンストップで実現しています。
現場担当者の負担を減らしつつ、
セキュリティと業務効率を両立できる点が高く評価されています。
社内教育・ルールづくりの実際
弊社では、全国300現場をサポートする中で、「情報安全講習」を毎週実施しています。
従業員一人ひとりが感染リスクを理解することで、
ヒューマンエラーを大幅に減らすことができました。
設備・通信環境の改善
現場ごとにVPN通信を標準化し、Wi-Fi制限を設定。
これにより、施工データの安全な送受信が実現しました。
まとめ|今こそ“安全管理”から“情報管理”へ

建設現場の安全管理と同じように、これからは「情報管理」が経営の柱となります。
DXが進むほどリスクは増えますが、同時にセキュリティ強化のチャンスでもあります。
サイバーセキュリティを経営課題として捉え、BCP対策と一体化させることが、
持続的成長の第一歩です。
✅ すぐに試せるチェックリスト
実施状況 | チェック項目 |
□ | 現場PCのウイルス対策・USB制限を設定している |
□ | BIM・クラウド共有のアクセス権限を定期確認している |
□ | 協力会社とセキュリティ方針を共有している |
□ | 情報安全講習を年2回以上実施している |
□ | サイバーBCPを経営計画に組み込んでいる |
執筆者情報

この記事は、延べ300現場の内業代行サービスを運営する施工支援会社が執筆しています。
実際の現場での写真整理・データ運用支援の経験をもとに、
実践的なセキュリティ対策を紹介しています。




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