出来形管理とは?新人・若手施工管理者が押さえるべき基礎知識
- さくら 及川
- 9月1日
- 読了時間: 5分
更新日:5 日前

出来形管理とは、土木工事における「設計図通りの形状・寸法になっているか」を
確認・記録する施工管理の一環です。
新人・若手施工管理者が最初に直面する業務の一つであり、
現場での品質確保や竣工検査の成否に直結します。
この記事では、出来形管理の基礎から実務での注意点まで解説し、
若手技術者や教育担当者に役立つ情報をお届けします。
目次
1.出来形管理の基本概念
2.出来形管理が重要とされる理由
3.出来形管理の具体的な手順
3-1. 測定・記録の準備(測点の設定と黒板記載の基本)
3-2. 写真管理のポイント(全景・ゼロ位置・実測の流れ)
3-3. 出来形管理表の作成と提出方法
4.新人がつまずきやすいポイントと実務の工夫
5.現役施工会社が語る「出来形管理の実務感覚」
6.まとめ:出来形管理は施工管理者の基礎スキル
6-1. 施工管理者として成長するための3つの実践法
6-2. すぐに試せるチェックリスト
出来形管理の基本概念
出来形管理とは、土木工事における施工物の形状や寸法を測定し、
設計図や規格と照合して確認する作業のことです。
完成形が設計通りであるかを証明する行為であり、施工管理の基本中の基本と言えます。
出来形とよく混同される用語に「品質管理」「工程管理」があります。
品質管理とは材料や仕上がりの性能を確認する行為であり、
工程管理とは作業の進捗やスケジュールを管理することです。
それに対して出来形管理は、施工物が規格通りの形・寸法になっているかを
記録する点で異なります。

※過去に当社で行った道路改良工事の出来形測定写真
👉 出来形管理を理解することは、施工管理全体の基礎を固める第一歩です。
出来形管理が重要とされる理由
出来形管理が必要とされる最大の理由は、発注者や監督職員への説明責任にあります。
施工物が設計通りであると示す出来形記録は、竣工検査時に必ず提出されます。
例えば橋梁工事では、支点ごとの出来形写真や出来形管理表が揃っていないと
検査不合格になるケースもあります。
また、出来形確認は瑕疵や保証の根拠にもなります。
万一、完成後に寸法不足や過剰が発覚した場合、
出来形記録がなければ補修費用を自己負担せざるを得ない事例もあります。
平成30年度のある道路工事では、出来形管理表の未提出により
追加費用数百万円が施工者側負担となった事例があります。
👉 出来形管理は「形式的な業務」ではなく、施工会社を守るための必須作業なのです。
出来形管理の具体的な手順
測定・記録の準備(測点の設定と黒板記載の基本)
出来形測定とは、設計図に基づき定められた位置(測点)で寸法を測ることです。
測点管理とは、測点の番号や位置を一貫して記録し、
後から追跡可能にすることを指します。
黒板には「工種名・部位・測点・日付・施工者」を明確に記載します。
黒板と出来形記録表の整合性が取れていないと、検査時に差し戻されるリスクがあります。
👉 測点の設定時には「黒板→記録表→写真」の順に必ず整合性を確認しましょう。
写真管理のポイント(全景・ゼロ位置・実測の流れ)
出来形写真とは、出来形を証明するために撮影する写真です。
一般的には以下の順序で撮影します。
全景(施工全体がわかる写真)

ゼロ位置(基準点を明示した写真)

3. 実測(スケールを当てて寸法を示した写真)

この順序が守られていないと、検査官から「証拠不十分」と判断されます。
例えば2023年の某河川工事では、ゼロ位置写真が欠落して再撮影となり
工程が3日遅延しました。
👉 撮影順序を習慣化することで、現場の効率と信頼を高められます。
出来形管理表の作成と提出方法
出来形管理表とは、測定値を設計値と比較し、規格内であることを示す帳票です。
国土交通省が定める出来形管理基準に従って作成し、
差異がある場合は補正や是正を行います。
また、現場によっては電子納品に対応したフォーマットが求められる場合もあります。
提出の際には「写真・管理表・黒板内容」が一貫しているか再確認することが重要です。
👉 提出前に「三点チェック(写真・数値・黒板)」を行う習慣をつけましょう。
新人がつまずきやすいポイントと実務の工夫
新人施工管理者がよく指摘されるのは、黒板と出来形記録表の表記ゆれです。
例えば黒板に「測点Y-2」と書かれているのに、
記録表では「Y2」と表記されていると整合性が取れません。
また、測点の順序が設計図通りでないと、後から確認作業に大きな時間を取られます。
さらに、スケール写真の目盛りと記録値が±5mm以上違う場合、
検査で再測定が求められます。
👉 若手は「整合性」と「順序」を意識するだけで、大幅に信頼度を高められます。
現役施工会社が語る「出来形管理の実務感覚」
全国300現場の写真整理を代行してきた当社の経験から言えるのは、
出来形管理は「単なる記録」ではなく「信頼を築く証拠資料」だということです。
実際に現場教育で強調するのは以下の3点です。
出来形写真は「誰が見ても理解できる構図」で撮ること
測点番号や表記は一貫して使うこと
記録表は「第三者目線」で確認すること
👉 出来形管理の習熟度は、若手施工管理者の評価に直結します。

まとめ:出来形管理は施工管理者の基礎スキル
出来形管理の正確性は、品質保証と施工会社の信頼性に直結します。
写真・数値・書類の整合性を確保することが、検査合格の最短ルートです。
新人・若手はまず基本手順を徹底的に習得しましょう。
施工管理者として成長するための3つの実践法
撮影前に必ず黒板・測点を確認する
測定値は現場でダブルチェックする
提出前に三点チェック(写真・数値・黒板)を行う
すぐに試せるチェックリスト
✅黒板と出来形管理表の表記が一致しているか
✅測点の順序が設計図通りか
✅出来形写真の撮影順序(全景→ゼロ位置→実測)が守られているか
✅測定値とスケール写真に±5mm以上の差がないか
✅出来形管理表・写真・黒板内容に不整合がないか
👉 今日の現場からチェックリストを活用し、確実な出来形管理を実践してみてください。