施工管理の請負契約トラブルと防止ポイント
- さくら 及川
- 2025年12月8日
- 読了時間: 12分

施工管理の現場では請負契約の認識違いや工事範囲の曖昧さが原因で、
建設業ならではのトラブルが発生しやすくなります。
この記事では、よくある施工管理の請負契約トラブルと、
防止につながる実務的なポイントを具体例とともに解説します。
目次
施工管理で起きやすい請負契約トラブルとは

施工管理の現場では、請負契約の理解不足や工事範囲の曖昧さによって、
建設業特有のトラブルが発生しやすくなります。
特に契約書と現場運用の差が生まれると、
小さな行き違いが大きな損失につながるため注意が必要です。
ここでは施工管理における主要な請負契約トラブルを理解し、
防止のために押さえるべきポイントの全体像を解説します。
契約内容の不明確による工事範囲トラブル
工事範囲の不明確さは施工管理で最も多い請負契約トラブルです。
仕様書や図面の解釈違いが原因で、追加工事か否かの判断が曖昧になり、
後から費用負担の争いに発展するケースが少なくありません。
特に変更工事については、元請・下請の双方で認識を揃えることが重要です。
また仕様書と図面が一致していない場合、どちらを優先するか判断できず、
施工側が独自判断してしまうことで問題が大きくなることがあります。
こうした場面では、契約前の書面確認と施工前打合せの徹底が必要です。
▶ 現場監督への行動促進:不明確な範囲は必ず文書で確認する習慣をつけましょう。
工期遅延・工程管理に関する認識違い
工期遅延に関するトラブルは、施工管理における請負契約の典型的な課題です。
工程表の更新が十分に行われていなかったり、
遅延原因の責任範囲が曖昧なままだと、
請負契約上の「工期条項」に抵触し、損害賠償や追加費用の議論が発生します。
特に材料供給の遅れや他工種との干渉など、
責任が複数の関係者に分散しがちな要因はトラブルを複雑化させます。
工程管理(スケジュール管理)は記録を残すことで立場を守ることができます。
▶ 行動促進:工程表は毎週更新し、遅延リスクは早い段階で共有しましょう。
支払い条件・出来高に関するトラブル
出来高査定や支払い条件に関する認識違いも、
現場で頻発する請負契約トラブルの一つです。
出来高管理が曖昧なままだと、「どこまでが施工完了なのか」が双方で違ってしまい、
査定額に差が生まれます。
請負契約では「出来高の判定基準」を明記するか、
写真や検査記録をエビデンスとして残すことが重要です。
また支払い時期の認識がズレていると、
キャッシュフローに影響するため、会社経営にも直結する問題になります。
契約書に基づき、支払い条件の確認と記録化を行うことでトラブルを未然に防げます。
▶ 行動促進:出来高は数値・写真・文書の3点セットで必ず記録しましょう。
請負契約トラブルが発生する原因

請負契約トラブルの多くは、契約書の理解不足や現場運用とのズレから生まれます。
施工管理では図面・仕様書・契約書といった複数の書類を扱うため、
どれか一つでも読み違えると工事全体の進行に影響が出ます。
ここでは契約トラブルが起きる根本原因を整理し、対策の前提となる理解を深めます。
契約書の読解不足・条項理解の欠如
契約書条項には工事範囲、工期、出来高、変更契約など、
施工管理に直結する重要な記載が含まれています。
しかし実務では「細かい条文を読み切らないまま着工する」ケースも多く、
後から条項の解釈をめぐってトラブルが発生することがあります。
特に注意すべき条項は以下のとおりです。
工期条項(遅延損害・延長条件の規定)
出来高査定方法(測定基準や写真管理)
追加・変更工事の承認プロセス
支払い条件(締め日・支払日・出来高反映時期)
これらを理解していない状態で現場が動き出すと、
「契約ではこう書いてあったはずだ」という争いが起きやすくなります。
▶ 行動促進:着工前に重要条項だけでも必ず読み合わせを行いましょう。
現場での口頭合意が増える運用体制
多くの現場では、急な指示や調整が頻繁に発生するため、
書面ではなく「口頭」で合意して進めてしまうことが少なくありません。
しかし口頭合意はエビデンスが残らず、請負契約上の正式な変更には該当しません。
そのため以下のトラブルが起きやすくなります。
追加工事の有償・無償判断でもめる
元請・下請の認識が作業日ごとにズレていく
言った/言わないの水掛け論が発生する
現場が多忙になるほど文書化が疎かになりがちですが、
後から膨大な損失につながる可能性があるため、最も注意すべき運用リスクです。
▶ 行動促進:小さな変更でも、必ず日報やメールで記録として残しましょう。
工程管理・進捗管理の記録不足
工程トラブルは多くの場合、「記録不足」という単純な原因から発生します。
現場では多くの作業が同時進行するため、
遅延の原因がどこにあるか客観的に説明できない状況が生まれやすくなります。
その結果、契約上の責任分担が不明確となり、関係者間の対立を招きます。
とくに以下の点が記録不足につながります。
工程表の更新を行っていない
写真記録が不足しており、進捗の証拠がない
日報・打合せ記録が曖昧で内容が正確でない
記録が不十分だと、出来高管理や変更契約の根拠が弱くなり、
契約上の立場を守ることができなくなります。
▶ 行動促進:毎日の記録が自分と会社を守る「契約上の武器」になります。
施工管理者が実践すべき防止ポイント
施工管理の現場で請負契約トラブルを防ぐためには、契約理解だけでなく、
日々の記録や認識共有といった実務レベルの改善が欠かせません。
特に出来高管理や変更契約の扱いは、工事の進捗と費用に直結するため、
トラブル防止の観点から最も優先して取り組むべき領域です。
ここでは施工管理者が実際の現場で確実に実践できる防止ポイントを紹介します。
契約前の工事範囲・仕様の明確化と文書化
請負契約の防止策として最初に取り組むべきは、工事範囲・仕様の明確化です。
図面・仕様書の内容が一致していない場合、
そのまま着工すると高確率でトラブルになります。
また、現場段階で想定外の作業が生じても、
契約前に基準が整理されていれば対処が容易です。
特に以下の点を文書化することが重要です。
工事範囲と境界の定義(どこまでが契約内か)
仕様書・図面に差異がある箇所の整理
契約前打合せで決定した事項の記録(議事録化)
こうした「事前の文書化」は、追加工事の判断材料になり、
元請・下請双方が同じ基準を持つことで誤解を防ぎます。
▶ 行動促進:着工前の打合せ内容は必ず文書化し、双方で保管しましょう。
追加・変更工事は必ず書面化する運用
変更契約は請負契約における最重要ポイントと言っても過言ではありません。
追加工事が発生した際、書面がないまま施工すると「有償か無償か」で必ず揉めます。
変更契約書や覚書は、工事費や施工範囲を明確にし、
トラブルの芽を摘む役割を果たします。
書面化する際に意識するべきポイントは次のとおりです。
追加工事の理由(なぜ発生したか)
発生箇所・範囲(写真付きで明確化)
金額・単価・数量の根拠(算定方法を明記)
承認者・承認日(エビデンスとして必須)
エビデンス管理は後から「誰が・いつ・何を判断したか」を説明する根拠となり、
契約上の立場を守るうえで非常に有効です。
▶ 行動促進:追加工事は必ず書面化し、写真・数量根拠と一緒に保存しましょう。
工程管理・出来高管理の精度向上
出来高管理は工事費と支払い条件に直結するため、
契約トラブルを防ぐうえで最も重要な管理項目です。
また工程管理の精度が低いと遅延原因が曖昧になり、
責任範囲の判断が難しくなるため、契約上のリスクを高めることになります。
特に実務で意識するべきポイントは次のとおりです。
工程表は1~2週間ごとに必ず更新する
進捗写真を体系立てて保存する(撮影角度を統一)
出来高数量は測定値と記録写真をセットで保存
遅延発生時は「原因・責任範囲・対応」を即時整理する
エビデンスの質が高いほど、出来高査定の正確性が上がり、
請負契約のトラブルを避けることができます。
▶ 行動促進:工程と出来高の記録は「週次で必ず更新」する習慣をつけましょう。
現役施工会社だから伝えられる実務的アドバイス

施工管理と請負契約のトラブルは、理論だけでは防ぎきれません。
現場では想定外の事象が毎日のように発生し、
契約書に書かれていない調整が必要になるからです。
この記事は、全国300現場の写真整理や内業を代行してきた
土木施工会社の経験にもとづき、
机上では得られない「現場目線のアドバイス」をまとめています。
施工管理者が日々の業務にすぐ活かせる内容を紹介します。
実際の現場で多い契約トラブルの具体例
施工管理の現場では、契約書上は明確でも、実務で認識がズレる場面が頻繁に発生します。
ここでは全国300現場の支援経験から、特に多かったトラブル事例を紹介します。
① 仕様書と図面の不一致による追加工事争い
仕様書には「A工法」、図面には「B工法」と書かれており、
現場判断で施工した結果、元請・下請の費用負担が対立した例があります。
事前の文書化がないまま進めたため、双方の主張が食い違い解決までに時間を要しました。
② 変更工事を口頭で承認した結果、無償扱いになったケース
元請が「この部分、少し伸ばして施工しておいて」と口頭で指示。
下請は追加工事と認識していたものの、承認書面がないため無償扱いとなりました。
最終的に数十万円の差が生じ、双方の信頼関係を損なう結果となりました。
③ 出来高管理の不足で査定額が半額になった事例
写真が少ない・数量の根拠が曖昧といった理由で、
実際に施工した量が認められず、想定より大幅に少ない査定になったケースです。
「撮っていれば証明できた」場面が多く、現場では特に再発が指摘されています。
▶ 行動促進:事例を教訓にし、曖昧な作業は必ず書面化して記録を残しましょう。
現場監督が日常的に行うべき予防アクション
施工管理のトラブル防止には、
「特別な取り組み」よりも日々の小さな習慣を継続することが最も効果的です。
現場監督が日常的に行うべきアクションを、実務に合わせて整理します。
■ 1:日報で“事実”を正確に残す
日報は単なる作業記録ではなく、契約上のエビデンスです。
作業内容・天候・人数・材料・トラブルの有無を簡潔に残すことで、
後日の「言った/言わない」問題の大半を防げます。
■ 2:議事録と写真整理を週1で必ず更新する
打合せ内容と写真を定期的に整理しておくと、変更契約の根拠が明確になります。
全国300現場の支援経験では、
写真整理が遅れる現場ほどトラブル発生率が高くなる傾向があります。
■ 3:元請・下請間で認識合わせの時間を作る
週1回の短い打合せでも、工事範囲や進捗の認識が揃うため、
工程遅延や追加工事のミスコミュニケーションを減らせます。
▶ 行動促進:今日から1つで良いので、予防アクションを必ず実践してみましょう。
まとめ:施工管理と請負契約の理解がトラブル防止の鍵

施工管理と請負契約のトラブルは、
現場の忙しさや書類の煩雑さにより軽視されがちですが、
実際には工期・費用・品質に直結する極めて重要なテーマです。
工事範囲の曖昧さ、変更契約の未整備、出来高管理の不足といった要因は、
小さな認識違いだとしても、積み重なると大きな金額や信頼を失う結果につながります。
施工管理者が日常的に意識すべきことは、
「曖昧を残さず、記録を増やし、認識を揃える」というシンプルな3つの行動です。
これらを徹底することで請負契約上のリスクを大幅に減らし、
現場トラブルを“未然に”防ぐ体制が整います。
また、全国300現場の写真整理を代行してきた実務経験からも、
記録の質が高い現場ほど請負契約の問題が少なく、
工程管理や出来高の精度も向上していることが明確です。
施工管理の基盤である契約理解を深め、
記録を習慣化することが現場力そのものを強化する道筋となります。
すぐに試せるチェックリスト
下記のチェック項目は、実際に全国300現場の内業支援から抽出した、
「施工管理×請負契約トラブルを防ぐための最低限の実務行動」 です。
今日から現場でそのまま使えます。
■ 契約書・仕様書の事前確認チェック
工事範囲(境界・除外項目)を文書で整理している
仕様書と図面の内容に差異がないか確認している
重要な契約書条項(工期・変更・出来高・支払い条件)を把握している
着工前に元請・下請間で内容の読み合わせを実施した
■ 追加・変更工事の管理チェック
追加工事は口頭指示ではなく書面(メールでも可)で残している
変更契約書・覚書のテンプレートを現場に共有している
追加工事の写真・数量・根拠資料をセットで保存している
誰が承認したか(承認者・日付)を確実に記録している
■ 工程管理・出来高管理のチェック
工程表は週1以上の頻度で更新している
進捗写真は撮影角度を統一し、体系立てて保存している
出来高数量の根拠(測定値・写真)を必ず残している
遅延が起きた場合、原因・責任範囲・対応を即日整理している
■ 日常管理・コミュニケーションのチェック
日報に「事実」を正確に残している
打合せ内容を議事録化し、関係者に共有している
元請・下請間で定期的に認識合わせの時間を設けている
疑問点や曖昧な指示はその場で確認する習慣をつけている
この記事の執筆者について
この記事は、全国300現場以上の写真整理・内業代行サービス を提供してきた
土木施工会社が実務経験をもとに執筆しています。
現場のリアルな課題を数多く見てきた立場から、
施工管理者が明日から使える具体的で実践的なノウハウをまとめています。




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