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洋上風力発電とは何か?基礎から読み解く建設業界へのインパクト

  • 執筆者の写真: さくら 及川
    さくら 及川
  • 10月20日
  • 読了時間: 7分
洋上風力

今、建設業界やエネルギー業界で大きな注目を集めているのが「洋上風力発電」です。


2050年カーボンニュートラルやエネルギー自給率の向上といった国の政策目標の中で、

洋上風力は再生可能エネルギーの柱として位置づけられています。


広大な海域を活用することで安定的かつ大規模な発電が可能であり、

陸上風力や太陽光にはない優位性を持ちます。


一方で、初期投資の巨額さや資材価格の高騰、

洋上施工における安全・品質管理といった課題も多く存在します。


つまり洋上風力は、

大きな事業機会であると同時にリスク管理や技術力が試される分野です。


本記事では、洋上風力発電とは何か、その仕組みやメリット・懸念点、

さらに建設業界に与えるインパクトを基礎から整理して解説していきます。



目次

  1. 洋上風力発電とは何か

    発電の仕組みと特徴 

    陸上風力との違い

  2. 洋上風力発電が注目される背景 

    脱炭素・再エネ政策の強化 

    エネルギー安全保障と市場規模の拡大 

    海外の先行事例(欧州・アジア)

  3. 洋上風力発電の方式と技術 

    着床式と浮体式の違い 

    建設・施工上の技術課題

  4. 洋上風力発電のメリットとリスク

    安定した発電量と成長余地

    コスト高・資材調達リスク 

    安全管理と品質確保の課題

  5. 日本市場の現状と展望

    政府目標と導入スケジュール

    有望な海域と地場ゼネコンの役割 

    JOGMECなどによる推進体制

  6. 建設業界へのインパクト 

    ゼネコンに求められる施工力と技術革新 

    BIM/CIM・DX・施工ロボット活用の可能性

    人材不足と外国人技能者活用の現実

  7. 経営層が押さえるべきポイント 

    投資判断におけるリスクとリターン 

    官公庁・発注者の高度要求への対応

    競合との差別化(技術力 vs コスト競争力)

  8. まとめ:洋上風力が拓く建設業界の未来 




洋上風力発電とは何か


そもそも風力発電とは、風の力で風車を回し、

その回転エネルギーを発電機に伝えて電気をつくる仕組みのことです。


従来は陸上に多く設置されてきましたが、近年注目されているのが「洋上風力発電」です。


字の通りではありますが、洋上風力発電は、海上に設置した大型の風車を利用して風の力を電気に変える再生可能エネルギーの一つです。


再生可能エネルギーの柱として期待される洋上風力は、環境への貢献だけでなく、

建設業界にとっても新しい成長市場を切り開く存在といえます。



発電の仕組みと特徴


洋上風力発電とは、海上に設置した風車が風の力で回転し、

タービンを介して電気を生み出す再生可能エネルギーの一種です。


海上は陸上よりも風が強く安定しており、発電効率が高いのが特徴です。


日本の平均設備利用率は陸上風力で20%前後ですが、

洋上では40%以上が期待されています。



陸上風力との違い


陸上風力は設置場所の制約が多く、景観問題や騒音の課題もあります。


一方で洋上風力は広大な海域を利用でき、より大型のタービンを設置可能です。


その結果、1基あたり10MW超の出力を持つ大型風車が導入されつつあります。


会場風力と陸上風力の違い



洋上風力発電が注目される背景



脱炭素・再エネ政策の強化


世界各国が2050年カーボンニュートラルを目標に掲げ、


日本でも再エネ比率36〜38%を2030年までに達成する方針が打ち出されています。


洋上風力は太陽光と並び、再エネ導入拡大の主力として期待されています。


カーボンニュートラルとは?

エネルギー安全保障と市場規模の拡大


日本のエネルギー自給率はわずか11.3%


海外資源依存からの脱却は喫緊の課題です。


洋上風力市場は2035年に数兆円規模へ成長すると予測され、

ゼネコンにとって新規事業機会の拡大が見込まれます。


主要国の一次エネルギー自給率比較(2020年)


主要国の一次エネルギー自給率比較(2020年)



海外の先行事例(欧州・アジア)


欧州ではイギリスやドイツ、デンマークが先行し、

既に50GW以上の洋上風力が稼働しています。


中国も2021年だけで新設容量を17GW増加させ、日本の数十倍の規模に成長しています。



会場風力の導入量


















洋上風力発電の方式と技術



着床式と浮体式の違い


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  • 着床式

    海底に基礎を固定。

    水深50m程度まで適用。

    欧州で普及している方式。


  • 浮体式

    浮体を係留する方式。

    水深200m超の深海でも導入可能で、

    日本の地形に適している。






建設・施工上の技術課題


  • 大型風車を洋上に輸送・設置するための専用船舶不足


  • 海底地盤調査・基礎工法の高度化


  • 台風・塩害・荒天など日本特有の自然条件への対応


  • メンテナンスコスト増加と遠隔監視技術の必要性




洋上風力発電のメリットとリスク


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安定した発電量と成長余地


海上の強風を利用できるため発電量は安定し、太陽光と異なり夜間でも発電可能です。


導入拡大により発電コストも段階的に低下すると予測されています。



コスト高・資材調達リスク


初期建設コストは陸上風力の2〜3倍。


鋼材価格や船舶チャーター費用が急騰しており、為替変動リスクも収益を圧迫します。



安全管理と品質確保の課題


洋上施工は高波・強風下で行われるため、労働災害リスクが高い分野です。


品質確保と同時に、DXやロボットを用いた省人化の導入が求められています。




日本市場の現状と展望


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政府目標と導入スケジュール


日本政府は「2040年までに30〜45GWの導入」を掲げ、

2021年には初めての一般海域での公募入札が行われました。



有望な海域と地場ゼネコンの役割


秋田・青森・千葉・長崎などが有望海域とされ、

洋上施工ノウハウを持つ大手ゼネコンだけでなく、地場ゼネコンの協力体制が不可欠です。



JOGMECなどによる推進体制


石油・天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が洋上風力のリスクマネー供給や調査支援を行い、官民連携で普及を後押ししています。


☝️参考記事:日本経済新聞



建設業界へのインパクト



ゼネコンに求められる施工力と技術革新


洋上基礎工事やタービン設置など、高度な施工能力が競争力を左右します。


港湾工事や海洋土木技術を持つ企業にとって新たな強みとなります。



BIM/CIM・DX・施工ロボット活用の可能性


BIM/CIMを活用した施工シミュレーション、ドローンによる点検、

ロボットによる保守など、建設DXが競争力を左右する時代に入っています。



人材不足と外国人技能者活用の現実


慢性的な若手不足の中、技能実習・特定技能制度を活用し、

洋上施工や保守に対応できる多様な人材確保が求められます。




経営層が押さえるべきポイント



投資判断におけるリスクとリターン


巨額投資が必要なため、政府の支援策、入札制度、FIT価格を精査した上で事業参入判断を下す必要があります。



官公庁・発注者の高度要求への対応


設計・施工・保守の各段階で高い安全基準・品質基準が要求されるため、

内部管理体制の強化が必須です。



競合との差別化(技術力 vs コスト競争力)


欧州勢や総合商社との競争が予想されます。


低コスト化を図ると同時に、

施工ノウハウ・安全管理体制を差別化要素として磨き上げる必要があります。




まとめ:洋上風力が拓く建設業界の未来


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洋上風力発電は、日本の建設業界にとって「脱炭素時代の新たな成長ドライバー」です。


ゼネコン・準ゼネコンが持つ土木技術や施工力をいかに適用するかで市場競争力が変わります。


持続可能な事業機会を見据え、

BIM/CIM・DXの活用、人材戦略、安全管理の高度化を同時並行で進めることが、

経営層にとっての重要課題となります。




カエレル

本記事は、延べ300現場の施工アルバム・写真整理を代行してきた

「内業代行サービス」を提供する会社が執筆しました。


現場負荷軽減と品質管理を支援してきた経験をもとに、

経営層に有益な情報を発信しています。


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